以前の2回にひきつづき、エッセンの新作を集中してプレイしようという“エッセン新作ゲーム会”、今回はその3回目となりました。
プレイしたタイトルの印象、雑感等々をこちらにてご報告いたします。
“ロココの仕立屋”(マシアス・クラマー、ルイス&ステファン・マルツ/エッガートシュピーレ/2013年)
まずはこちら、小クラマーにマルツ父子という豪華なデザイナー3人による話題作から。
都合3種存在するダッチオークションにちょっとしたデッキビルド的要素、ボード上でのエリアマジョリティ、そしてもちろんリソース(糸や絹ですが)マネジメントとドイツゲームではお馴染みのメカニクスがふんだんに取り入れられており、セッション開始前のインスト段階で既にお腹一杯になりそうなボリューム。
難解な部分がない理解しやすいルールでユーザーフレンドリーにこれだけのボリュームを上手く纏め上げたのは3人のデザイナーによる力量そのものでしょうが、しかしはっきり中級者以上向けのオーソドックスなゲーマーズゲームであることも確かで、まあ初心者入門者お断りのレベルではあるかと。
縺れ合った糸のような、過多とも思える最終的な勝利への道筋を見通し、参加プレイヤーの優劣をリアルタイムで判断するのは困難で(とはいえそれでもなおプレイアビリティは高いのですが)、これは同じく今期エッセンの新作のひとつ“ブリュッセル1893”をプレイした時に感じたものと近い感覚で、以前より全くなかったものではないのですが、最新型のゲーマーズゲームのひとつの傾向とも言えるような気がしました。
小クラマーにしてはオーソドックスなデザインでそこがやや残念だったのですが、エッガートのトータルプロデュースがぴしりと決まった流石の完成度で遜色はなく評価はPositive-。
“ネイションズ”(Rustan Hakansson,Nina Hakansson,Einar Rosen,Robert Rosen/Lautapelit.fi/2013年)
“エクリプス”で話題をさらったフィンランドのパブリッシャーが放ったエッセン新作の話題作のひとつを国内流通を待って入手、この日初めての立卓となりました。
今回は国家ボードは表面、発展カードも無印の初級のみという初回プレイ時作者推奨のセットでのセッション。
時間的にも空間的にもスケールの広大な世界を対象としている割にはルール自体は比較的シンプルで、大量のカードもアイコンで機能的に整理されていることもありテキストは極力控えたデザインがなされていることからもしっかりとプレイアビリティを考慮していることが窺えるところは好印象。
リソースマネジメントはハードそのもので、拡大再生産とは言えそう易々とは楽にならないこのカツカツ感から僕はプレイ中ずっと“蒸気の時代”での似たような感覚を想起していました。しかしこのバランスデザインは間違いなく正解で、ゲームの面白さにしっかりと寄与しているものと言って間違いないでしょう。
現時点での僕自身の嗜好のコアからはいささか外れますが、鍛え上げられたデベロップ故の完成度の高さは流石で評価はPositive-。たっぷりと詰め込まれたフレーバーも好きな人にはたまらないでしょうね。
ただ僕のようなピュアユーロ信奉者には5時間のセッションは途中ダレることがほぼないとはいえ若干長く感じられたのも確かで、好き嫌いのはっきり分かれるハイエンドフリークゲームというのが今の僕の本作の評価。
2014年の現在、全世界のフリークたちがこぞって攻略に時間を割いているのでしょうね。
“犯人は踊る”(鍋野企画/2013年)
5時間の大セッションで流石にやや疲れたので、箸休め的に本作を。
昨年発売された国産同人のカードゲームで、手札により勝利条件が異なる一種の正体隠匿系。
探偵と犯人というふたつの主軸に、様々な効果をもった脇役ともいうべきカード群が味付けすることで全体のボリュームを構成しています。
カードの効果はテキスト主体で表記されていますが、程よいバランスの考えられたデザインが上手くまとまっており、日本人に多いライトユーザーにもウケはいいかと思われました。
セッションの進行によって誰がどの手札を持っているのか、次第に情報が収束していくデザインは技ありで、評価はPositive-。フィラーとしても機能しそう。
“浪人”(高天原/2013年)
関西の重鎮、高天原が昨年末コミケにて発表したトリックテイク。
3スート切り札なしのマストフォローで、獲得したトリックでもって“ケルト”のように昇順か降順でカードを並べ、規定枚数に達することでタスクを消化し、得点とします。
正規流通バージョン前のいわばプロトタイプゆえ評価はしませんが、セッションの間はその面白さに意識を集中させられました。
切り札がないため手札に小さい数字しかない時が辛いという意見も参加プレイヤーから出されましたね。もし商品化されるならその辺りがどのように修正されてくるのか興味深いものです。と同時にトリックテイクのデザインの難しさについても考えさせられたり…。
“パケット・ロウ”(アーシェ&ヘンリック・ベルク/ホワイト・ゴブリン/2013年)
“オレゴン”などの作者によるエッセン新作ピュアユーロ。
全体的なメカニクスは非常にシンプルで、若干の特殊カードさえ理解できればすんなりセッションに意識を集中できる間口の広さがまずは好印象。
シンプルな競りでもって必要なカードを揃えていきタスクを達成することで名声点を得るという流れは実に素直そのもの。ただし、それだけでは当然終わらない…
親が指定したエリアでの入札、最後に親がビッドするのだがここで親が落札した場合そのラウンドは即終了、つまり落札できなかったプレイヤーはカードが入手できずに終了となる。
このメカニクスが秀逸で、シンプルな全体の構成に、非常に濃厚な人間臭い駆引きのスパイスが上手く加味されており、本作ならではの独特な面白さを生み出すことに成功している。
またこのメカニクスから様々な戦略的読み合いにも発展しうる可能性があり、奥行きがもたらされている点も素晴らしいかと。
もう少し続けたいと思わせるギリギリのところで終止符が打たれるこのきっぱりとした収束性こそドイツゲームそのもの。評価はPositive。ピュアユーロ愛好者であればやるべし。
“なつのたからもの”(ライナー・クニツィア/ニュー・ゲームズ・オーダー/2013年)
最後に本作でこの日は〆。クニツィアの“ノミのサーカス”の国内リメイクバージョン。
いわば坊主めくりとセットコレクションの楽しめる、クニツィアの安定の一作。
夏休みをテーマにした和風のアートワークが素晴らしく、個人的にはアミーゴオリジナル版よりこちらの方が好き。これだけで所有欲が満たされるという感覚も。
運要素の強いゲーム自体を僕はそれほど高く評価しないのでNegative+だがNGOのプロデュースには消費者を満足させるものが確かにあって、持っているだけで心のどこかに満足感を与えてくれるというのはコンポーネントありきのテーブルゲームとして成功しているとも思います。
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