2015/01/30

UDA土曜ゲーム会 2015年1月 (2015/01/24)

自宅1階のゲーム倉庫&プレイスペース“UDA”で毎月開催しているクローズド(といっても参加希望者は随時募集しておりますがw)ゲーム会の久々のレポートです。

11月と12月にもいつものように開催していたのですが(エッセン新作の数々をメインに消化できました)、忙しさにかまけて更新していなかったので中2か月空けて、ということになりますが、今月分はいつも通りの感じでプレイしたタイトルについて簡単な感想をこちらに書き留めておきます。


“フレッシュフィッシュ新版”(フリーデマン・フリーゼ/2Fシュピーレ/2014年)

まずはフリーゼ自身の手により新しく生まれかわった“フレッシュ・フィッシュ”から。

自分のお店とトラックを最短距離で結ぶことが目的のパズルチックなユーロ。

手番は二択で①予約ディスクの配置、②山のタイルをめくり配置、のいずれかを行います。②のアクションで“店”タイルを引いた場合競りとなりプレイヤー間で握り競りによる競合が始まります。

1997年に発表されている旧版ではやや分かりにくいことから“抜け”の心配があった“道路”の設置に関する処理(フリーゼ自身の言葉を引用するなら「多くのプレイヤーは道を可視化するのに困難を感じました」)。この部分が特異でやや敷居の高い印象をもたらしていたのが旧版でしたが、この部分がまずは随分と分かりやすいルールに改められており、またそれに伴い全体的にルールは分かりやすく、新規参入にあたっての敷居が低くなったというのが第一印象。

この改訂でプレイアビリティは間違いなく上昇しているのですが、同時にフリーゼらしいと僕には思えた旧版ならではのフリーク受けの良い妙味も減退しているようで、ここが新版の評価の分かれ目になりそう。

とはいえ予約ディスクの配置やタイルのドローのタイミングをめぐるプレイヤー間の駆引きは本作でも十分に楽しめるもので、僕はまずは新版でやってみてそれから同梱されている旧版のルールにも挑戦してみるというのもひとつの選択肢かな、と。(幸いにもボード裏面が97年旧版に対応している一種のリバーシブル仕様です。)

総じて分かりやすく60分で終わるきっぱりとしたピュアユーロ。Neutral+


“ダンジョン・バザール”(P・セチェット、S・ルキアーニ、D・タスキーニ/クレイニオ・クリエイション/2014年)

“ツォルキン”のコンビ+1名による注目のエッセン新作。

プレイヤーはダンジョンに挑むいわば勇者たちにアイテムを売る商人。ただ自らがゴブリンを率いてダンジョンにももぐりオーガや会計士といったキャラクターと取引きもするというもの。

メカニクスとしてはエリアマジョリティ、ポイント制アクション選択、ドラフトなど。

最初にそのラウンドに登場する勇者たちが公開され、そこの情報をもとに今回売り出す商品にめぼしを付けてダンジョンに入り、手に入ったアイテムたちを清算フェイズで勇者たちに売り捌いていくという流れ。

テーマ、フレーバー面での出来は良く出来ており、細部まで手抜きのない美しいアートワークもあって世界観は十分楽しめるのですが、(これがあの“ツォルキン”の2人なのかと思わずにはいられない)細かい部分でのルールの粗さやバランスの調整不足感はセッションを通して終始感じられるもので、ダイヤの原石のような、秀作にもなりえた可能性は感じられるものの、あと一歩が足りない惜しい一作という印象。システムも世界観に沿ったもので全体的なマッチングはかっちりしているのですが。

あとカード、タイル等のいくつかのエラーがかなりのマイナスポイント(これが最近では稀に見る相当大きなもので…。納期に間に合わせるため相当急いだ?)で評価はNeutral-。こういうヒューマンエラーにはどうしても厳しくなってしまうなあ…。


“グラスロード”(ウヴェ・ローゼンベルク/フォイヤーラント/2013年)

ローゼンベルク卿のエッセン13年作が遂に日本語版として発売されたので早速入手して立卓。

チェコ共和国国境付近、バイエルンの森を貫く240キロの“ガラスの道”を舞台にしたハンドマネジメント、リソースマネジメント、バッティング等がメインメカニクスのゲーム。

全員共通の15枚の手札から5枚を選択。手番で1枚プレイするのを3回繰り返せば1ラウンド終了で全4ラウンドでゲーム終了。

このカードプレイフェイズのメカニクスが特徴的で、スタPから順にプロットしておいた手札を公開してプレイしていく際、他Pは手札に持っているカードがあれば義務として公開します。この時手番プレイヤーは1枚に載る2アクションのうち1アクションしかプレイできず、逆に他Pはボーナスとして手番外であるにも関わらず1アクションが実行できます。つまり先手プレイヤーがプロットすると思われるカードを手札に残しておく“読み”が重要になるわけです。ここに他Pの状況を冷静に分析して行動を予想する醍醐味があります。

もうひとつ特徴的なのが各Pが持つ特製の“生産ホイール”によるリソースの管理。全てのリソースをこの機能的に計算されたデザインの個人ボード上で管理するのですが、原料となるリソースと加工品となる製品の管理が自動的に処理されるこの設計は非常に効率的で優秀という印象。この“生産ボード”が重要なツールとして行われる本作のリソースマネジメントは“流石はローゼンベルク”とでも言いたくなるようなシビアで洗練されたもので、僕などは最先端のリソースマネジメントを見た思い。(矢印の多い所謂“矢印ゲー”ですなw)

以上2点が印象に残る、“濃い面白さ”をしっかりと内包しつつも60分で終わる収束性の良さも併せ持った優等生的モダンユーロ。Positive-

周りに十分に目配せできて初めて活きてくる各種の仕掛けからか、初めてのプレイでは本作の持つ醍醐味を十分に味わうことは困難であろうと思われる敷居の高さはありますが、それは習熟度の問題でしょう。(あと日本語サイコー!やっぱプレイしやすい!)


“マングロービア”(エイリフ・スヴェンソン/ツォッホ/2014年)

ツォッホ発のエッセン新作にして話題作を初プレイ。

メカニクスとしてはワーカープレイスメント、エリアマジョリティ、ハンドマネジメントなど。

ワーカー配置といってもワーカーはひとつだけで、このオンリーワンのコマで二つのアクションと手番順(というか実行順というか)の決定を同時に行うのがまずはミソ。シンプルにして諸要素が凝縮されていることもあって、ここでの選択には実に良質なジレンマが。

また主戦場となる島での争いは格子状に配置されている正方形のマスにコマとなる小屋を配置していくことで行われるのですが、複数のエリアが複雑に(といっても状況は一目で把握できるものですが)絡み合う構造で、一つの小屋が複数のエリアに影響を及ぼすことからここでもアクション選択と同様にひとつの意思決定が複数の結果に影響を及ぼすという構造。

根本部分でのシンプルさはしっかりと守りつつ、しかしながらインタラクションがもたらすプレイヤー間のパワーバランスが盤上に入り乱れる様はまさに良質なドイツゲーム的陣取りの理想形で、刻一刻と変化していく盤上の状況からは一刻も目を離すことができず、夢中になって勝敗の行方に集中しているとあっという間に時間が過ぎ去ってしまう至福の刻をもたらしてくれる良質なゲームという印象。

特に目新しく斬新と思えるメカニクスがあるわけではないですが、既存のものを上手く組合せたり提示したりすることで経験豊かなプレイヤーにも新鮮な楽しさを提供し夢中にさせてくれるゲームが出来上がるのですからこれはこれでデザイナーの力量に他ならないという思いです。

ノンテキストでプレイアビリティも上々の最新ユーロに二重丸を。今のところ特に欠点も見当たらず、またツォッホの最上級コンポーネントもあって評価はPositive。現時点でのエッセン14個人的五傑入り確定。

戦術的にアミュレット特化が強いという評判もあるようですが今回のセッションでは特化型は(10点以上のリードを許して)2位止まり。1位はアミュレットにも配慮しつつバランスよく要所を抑えたプレイヤーで、このあたりしっかりとバランス調整もできているという印象です。(因みにアミュレット完全無視型は最下位でした。)

おそらく新進気鋭のデザイナーだと思われるスヴェンソンは個人的には一躍注目のデザイナーに躍り出たという印象。この人が“マンモス”のオストビー(この人も好き)と共作したのが“ドゥードゥルシティ”なのですよね。


“シェッフェルン”(ライナー・シュトックハウゼン/dlp/2014年)

キックスターター出身のシュトックハウゼンによるエッセン14新作。

ラウンド開始時に配られた4枚の手札。手番になったら①表向きにプレイすることで対応するリムジンを移動する、か②裏向きにプレイすることでキャラを変え、乗っているリムジンを変更するか、この二択を繰り返し、四巡して手札を使い切ればラウンド終了。自分のリムジンが停まっている店のお金が貰えるという寸法。

シンプルを地で行く、ルールの簡単なユーロで、それなりに考えどころやジレンマもあるのですが、結局は他Pの持つ手札次第というのが最終解答という印象は拭えず、まあ淡々とした進行もあって場は選ぶのかな、と。

運次第ですし勝っても負けてもその場限りの後腐れなしで、セッションの間はワイワイと盛り上がれるなら楽しめるかと。まあ僕には存在意義の薄い一作。Negative+


“世界の七不思議”(アントワン・ボザ/レポス/2010年)

言わずと知れた名作を久しぶりに立卓。

当初は発売されたばかりの拡張“バベル”を立てるつもりだったのですが未プレイ者がいたこともあり、まずは基本、そのあとで“バベル”を、という流れに(とはいえ時間の都合もあり結局“バベル”は立ちませんでしたが…。)。

テックツリーにハンドマネジメントやリソースマネジメント、そしてドラフトの醍醐味が存分に味わえる軽量級文明発展型カードゲーム。

プレイアビリティが抜群に高く、敷居の低さに比して学習効果は高く、プレイ経験が強さに反映される懐の深さも。

収束性の高さ、競技性、リプレイアビリティ、拡張の可能性、戦略の研究欲求などなどの長所が多数見受けられるゼロ年代ドイツゲームのひとつの成果であり、ボザの最高傑作というのが僕の中での本作の立ち位置(あえて不満らしいことをいえばこの邦題かな。ゲームには全く非はないのでなんですがあんまり好きになれないこの感覚。)。Positive

天邪鬼な性格のせいか判官びいきな性格の成せるわざか、メジャー過ぎるタイトルにはどうしても距離を置いてしまいたくなるのですが、この日の久しぶりのプレイで、まだまだプレイ数が少ない名作だなという思いも生まれ、各種拡張も含めて今後もっと積極的に立卓していきたいという欲求さえ。(でもできるのか!?)


“ニエット!”(ステファン・ドラ/ゴルトジーバー/1997年)

どうしてもひとつはトリックテイクがやりたくて、このタイトルで〆ました。

4スート、1から9の9ランク(ただし1のみ2枚)でマストフォロー、切り札、スーパー切り札あり。

ディールのあとトリックを開始する前にスタPや点数、切り札となるスートなど各種の取り決めを行う“ピサ”や“トリックマイスター”と同系統のタイプで、順番に黒ディスクをボードに置いていくことでひとつひとつの可能性を否定(NJET!)していき、残された各1マスでそのラウンドのルールが決定されるというのが大きな特徴で、ここでの各プレイヤーの動きを注視することもまたペアを組む際の大きな判断材料になっているところがミソ。

勝敗に大きく影響を及ぼすルールが各プレイヤーの投票によって決定されるというのはやはりアドバンストであり、またその高い競技性もあって、ある程度トリックテイクに慣れ親しんだ中上級者向けというのが僕の評価。そして変態的変則的というよりクラシックな保守本道を進んでいった結果としてのひとつのカタチという感覚を僕は持っています。(などとエラそうに言ってますがトリックテイク
の森はあまりにも深淵で、この持論さえ簡単に崩壊しかねない感覚もまたあるのですが…。)

ドラの完成されたシステム、フォービンケルの美しく品のあるアートワーク、そしてゴルトジーバーの高品質なコンポーネントと三拍子揃った名作。Positive-



以上7タイトルを終日にわたって代わる代わる立卓した一日でした。ではまた来月!

2015/01/17

越前市(福井)ボードゲームの会 1月ゲーム会(2015/01/11)

主催を務めるゲーム会への参加で今年初のゲーム会参加となりました。

プレイできたタイトルについて簡単な感想をこちらにてまとめておきます。


“ヤバラス”(キャメロン・ブラウン/ネスター・ゲームズ/2009年)

スペインに居を構え、秀逸なアブストラクトを発信し続けるネスター・ゲームズ。代表作といってよい2人用アブストラクトからこの日は開始。

ルールは端的にいえば三目作ってしまってはいけない四目並べ。つまり二目と間1マス空けて一目のラインを作るのが目的です。

シンプルながら奥深く味わい深い、また非常に分かりやすいアブストラクトで、いったんプレイし始めると中毒のように何度も続けてプレイしたくなる魅力が。Positive

先手が若干有利なのかなとか定石はあるのだろうかなどなど気になる点も少なくなく、今後も末永く立卓していきたいタイトルのひとつ。

盤面を通して二人の間で会話が成立するのも良く出来たアブストラクトの証左でしょうね。

長期戦になり盤面を埋め尽くすような展開になるといかに三目から逃れるのかという勝負にもなりそう。


“ゼロ”(ライナー・クニツィア/テンデイズ・ゲームズ/2014年)

クニツィアの名作を昨年国内ショップにより再版されたバージョンで。

ゲームは7つのスート、8つのランクからなる全56枚のカードからなります。

数字がそのまま失点になりますが、同じスートやランクをそろえていくことで帳消しにし、理論上の満点である“0”点をめざすハンドマネジメント、セットコレクション。

ディールが終わるとデッキからのドローが一切ないため場の5枚を含めたプレイヤーひとりあたり9枚×プレイヤー数のカードのみでセッションが進行するゼロサム構造。

数学者クニツィアのデザインしたこのカード構成が絶妙なのか、シンプルなルールながら濃厚なジレンマの連続で、控えめな存在感ながらピカリと光る完成度の高いカードゲームの絶好のサンプルのひとつ足り得る資格十分。Positive-

場の5枚を媒介にした緩やかなカードの循環という印象。

(ちなみにオリジナルは1998年ベルリナー・シュピール・カルテンより。)


“ドラゴン・スレイヤー”(デイヴィッド・J・モーティマー/インディ・ボーズ&カーズ/2014年)

ダイスロールによるシンプルなセットコレクション。

ヒット率の高いパブリッシャーゆえ本作にも期待していたけれどこれはちょっと…か。

プレイヤーの意志による選択やインタラクションが薄く、多人数ソリティア色濃厚ながら手番でのアクションもほぼダイスロールの結果次第で機械的な処理がほとんどゆえ、まあレッドドラゴンがどうこうとか参加者各位が展開にフレーバー的な味付けをして盛り上げていかなければ辛いタイトルか…。Negative

次作には期待してます。>パブリッシャー殿


“グランオクトパスの夜”(フレデリック・モラード/イエロ/2014年)

シンプルなプロット→バッティング、セットコレクション。アドバンスト・ルールもあるようだが今回は基本ルールを4人で。

“カルティスト”と“落し仔”という2種類のコマを各自が操り、勝利条件となるアイテムの収集を目指すクトゥルフテーマもの。

プロットするのはアクションではなく進みたい場所で、ミニマルに延々とその場所のプロットを続けるのみというのはシンプルというよりやや味気なく、なんだか物足りないという印象。

他者の行動をその所持アイテムの状況から推測するのがゲーム性を生み出すのは分かるつもりだけれど、端的に“お仕事”問題が発生しやすいという問題点も見逃せず、Negative+

メカニズム的に同ジャンルで(意外に激戦区という印象)、これより秀でていると思われるタイトルは少なくなく、僕にとって存在意義は薄いか。

存在感十分の木製コマ、美しいアートワークはイエロのナイスワークだけれどね。


“ドゥードゥル・シティ”(エイリフ・スヴェンソン、クリスチャン・アムンゼン・オストビー/アポルタ・ゲームズ/2014年)

ダイスロールの結果を効率よく自分のシートに書き込むことで得点に反映していく“クウィックス”や“ストリームス”、“ローリング・ジャパン”などど同系統のメカニクスのタイトル。

ひとつしかない青ダイスは全プレイヤーが共有、プレイヤー数+1個ある白ダイスをスタートプレイヤーから順に選択していくことで決定される1マスに道路となる線を引いていく。

先にあげた親戚関係にあるような他タイトル群にくらべて、ややゲーマーよりというか勘案すべき要素が増えているという印象で、テーブルゲーム初心者より多数のタイトルを経験済みの中級者以上にウケがいいかも。

脳内に描いていた当初の街の設計図どおりにいくはずもなく、そのままならなさに悶えつついかに美しく修正していくかが本作の妙味だろうか。Neutral+。リプレイ欲求も刺激されるし、まあ悪くない新規参入者という位置付け。


“ラ・イスラ”(ステファン・フェルト/アレア/2014年)

さてフェルト翁期待のエッセン新作。

①ラウンド開始時にドローする三枚の手札を三種のアクションに如何に割り振るか、②ボード上の動物を囲むことで入手し勝利点に繋げる、この①②のふたつが本作の二大柱という印象。

①は(デッキからのドローなので)運要素ありかつインタラクションなしの完全ソロプレイ、②は完全情報ゆえ運要素なしかつ動物は有限で早いもの勝ちなのでインタラクションありという構図。このふたつをマネジメントしていくのが本作の妙味か。

ルールやゲームの骨組みはシンプルでハードルが低いのは確か。しかし盤面の情報と手札(たったの3枚なのに!)をにらめっこして最善手は何かと考え始めると途端に深い深い迷宮の中に潜っていくようなこの感覚だ。

ふとなにやらパズルを解かされているような感覚にはっとすること少々。ここを面白いと思えるかどうかで本作の評価が分かれるような気がする。(ゲームなんてインタラクションが薄くなればなるほどパズルになっていくといってもいいかな、と。)

僕にはこのパズルはいささか難解すぎるけれど3枚の手札のハンドマネジメントの面白さはまた格別という印象で僕の評価はPositive-

しかしフェルトはほんとにいろんなアイテムを出してくるなあと、そこにも感心しきり。本作の丸いモジュラーボードにも新鮮な驚き。


“オロンゴ”(ライナー・クニツィア/ラベンスバーガー/2014年)

フェルトのあとは巨人クニツィアの新作を。4人と3人でこの日計2回プレイ。

握り競りと陣取りという分かりやすく熱い組合せ。

ルール、インタラクション、情報量、運要素といった各所のバランスの塩梅がまずは絶妙。

肥大化とシンプル偏重が二大潮流にも見える最近のユーロの中でこのシンプルな90年代的手触りは非アップトゥデートという感覚もまた否定できないものの大きな安心感とシンプル故に風化に耐えうる強靭な骨格には往年の名作ユーロの数々と同等の質が。Positive

既出なのかどうか、浅学の僕には判断できないけれど(おそらく初出だろう)、この独特な競りのメカニクスがまた良くできている。

ただ難点が皆無なわけではない。コンポーネントについて二点。視認性という言葉を持ち出したくなるタイルと白色のプラ製貝殻コマ。タイルについては“ある/ない”の判別が瞬時には着きにくい。また曲線を多用したデザインの貝殻は盤上に配置した時に安定性の面でやや難あり。これなら僕は単純に白円形ディスクを使いたくなる。(そしてこのために実際に発注したのだけれど。)

複雑なルールやテキストによる特殊効果がなくてもリプレイアビリティの高いゲームは作れるという好サンプル。


“マラケシュ”(ドミニク・エアハルト/ギガミック/2007年)

分かりやすいシンプルなルールと絨毯を敷き詰めていくという見た目のインパクトで掴みは十分な2008年度SDJノミネート作“ズライカ”の正確にはリメイク作。

手番開始時に市場のマネージャー駒の進行方向を3つの選択肢から選んだあとはダイスロールで自動処理というシンプルさ。“期待値”という言葉でもって短期的な視野での最大効率(あるいは予想される最小の損害)を考えつつプレイするようないわばすれっからしのゲーマーにはシンプルすぎて妙味が薄いというかなんというか。

手広く絨毯つまり自分の領土を盤面全体に分散させるか、一続きの広大な土地を形成し一攫千金の夢を見るかという選択肢もあるかもしれないけれど、そこまでのジレンマもないかなというのが率直な印象で、僕にとっての存在意義は薄く、端的にいえばノットフォーミーな一作。

流石はギガミック、コンポーネントの出来、魅力は十分だし、この“絨毯を敷き詰めていく”というギミックは立卓される場次第では大いにウケそうなのもまた確かだけれど。Negative+


“インフェルノ”(ライナー・クニツィア/テンデイズ・ゲームズ/2014年)

前述の“ゼロ”と同じく、東京三鷹のゲームショップ“テンデイズ・ゲームズ”から日本独自のバージョンとして再版されたクニツィアのカードゲームを5人で。

こちらはスタPがプレイしたカードと同じ色か数字を手札からプレイしていく一種のゴーアウト型。

プレイできない(あるいはしたくない)場合、それまでにプレイされたカード全てを失点として受け入れるというルールのせいでゲームが激辛の唐辛子のように刺激的になっていて流石はクニツィアとそのジレンマに身悶えすること必至。

クレバーかつ冷静な佇まいでもって、失点が低いうちに降りることも当然必要ながら、その押し引きの判断は容易ではなく、このジレンマこそクニツィアそのもの。Positive-

誰もが引かずに怒涛のようにカードがプレイされ始めるともう止まれなくなるこの光景は本作あるあるかとw

静の“ゼロ”に対し、動の“インフェルノ”と捉えることも可能で、それはまたクニツィアのデザイナーとしての多芸ぶりをなにより物語っているなあと。



この日は他に“キャメル・アップ”などをプレイ。

また他の卓では“コルト・エクスプレス”や“ナッソーの海賊”など新旧多数のタイトルが立てられ盛り上がっていました。

参加していただいた皆さんには謝意を。また今年も月1ペースでこのオープンゲーム会を開催していきたいものです。ではまた何卒。